2013年06月27日

こころ 夏目漱石 (ページ数:300p) (販売ショップ:楽天ブックス)

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■青空文庫から『こころ』を一部抜粋
三十五

 私(わたくし)は立て掛けた腰をまたおろして、話の区切りの付くまで二人の相手になっていた。
「君はどう思います」と先生が聞いた。
 先生が先へ死ぬか、奥さんが早く亡くなるか、固(もと)より私に判断のつくべき問題ではなかった。私はただ笑っていた。
「寿命は分りませんね。私にも」
「こればかりは本当に寿命ですからね。生れた時にちゃんと極(きま)った年数をもらって来るんだから仕方がないわ。先生のお父(とう)さんやお母さんなんか、ほとんど同(おんな)じよ、あなた、亡くなったのが」
「亡くなられた日がですか」
「まさか日まで同じじゃないけれども。でもまあ同じよ。だって続いて亡くなっちまったんですもの」
 この知識は私にとって新しいものであった。私は不思議に思った。
「どうしてそう一度に死なれたんですか」
 奥さんは私の問いに答えようとした。先生はそれを遮(さえぎ)った。
「そんな話はお止(よ)しよ。つまらないから」
 先生は手に持った団扇(うちわ)をわざとばたばたいわせた。そうしてまた奥さんを顧みた。
「静(しず)、おれが死んだらこの家(うち)をお前にやろう」
 奥さんは笑い出した。
「ついでに地面も下さいよ」
「地面は他(ひと)のものだから仕方がない。その代りおれの持ってるものは皆(みん)なお前にやるよ」
「どうも有難う。けれども横文字の本なんか貰(もら)っても仕様がないわね」
「古本屋に売るさ」
「売ればいくらぐらいになって」


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posted by 7876 at 19:09| 小説