2013年08月25日

こころ 夏目漱石 (その内(うち)学校が〜) (販売ショップ:楽天ブックス)

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■青空文庫から『こころ』を一部抜粋
 その内(うち)学校がまた始まりました。私たちは時間の同じ日には連れ立って宅(うち)を出ます。都合がよければ帰る時にもやはりいっしょに帰りました。外部から見たKと私は、何にも前と違ったところがないように親しくなったのです。けれども腹の中では、各自(てんでん)に各自(てんでん)の事を勝手に考えていたに違いありません。ある日私は突然往来でKに肉薄しました。私が第一に聞いたのは、この間の自白が私だけに限られているか、または奥さんやお嬢さんにも通じているかの点にあったのです。私のこれから取るべき態度は、この問いに対する彼の答え次第で極(き)めなければならないと、私は思ったのです。すると彼は外(ほか)の人にはまだ誰(だれ)にも打ち明けていないと明言しました。私は事情が自分の推察通りだったので、内心嬉(うれ)しがりました。私はKの私より横着なのをよく知っていました。彼の度胸にも敵(かな)わないという自覚があったのです。けれども一方ではまた妙に彼を信じていました。学資の事で養家(ようか)を三年も欺(あざむ)いていた彼ですけれども、彼の信用は私に対して少しも損われていなかったのです。私はそれがためにかえって彼を信じ出したくらいです。だからいくら疑い深い私でも、明白な彼の答えを腹の中で否定する気は起りようがなかったのです。
 私はまた彼に向って、彼の恋をどう取り扱うつもりかと尋ねました。それが単なる自白に過ぎないのか、またはその自白についで、実際的の効果をも収める気なのかと問うたのです。しかるに彼はそこになると、何にも答えません。黙って下を向いて歩き出します。私は彼に隠(かく)し立てをしてくれるな、すべて思った通りを話してくれと頼みました。彼は何も私に隠す必要はないと判然(はっきり)断言しました。しかし私の知ろうとする点には、一言(いちごん)の返事も与えないのです。私も往来だからわざわざ立ち留まって底(そこ)まで突き留める訳にいきません。ついそれなりにしてしまいました。


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posted by 7876 at 01:58| 小説